静電ドライバを搭載したイヤホン『CCA NRA』や『KZ ZEX』が登場してからまだ日が浅いですが、ついに、静電ドライバ、ダイナミックドライバ、バランスドアーマチュアドライバの3種類のドライバを搭載したイヤホンが登場してしまいました。KZのZEXに『PRO』という名前をつけて登場したこのイヤホンはどんな音がするんでしょうか?検証してみます!
スペック
カタログスペック
・重量 78.6g
・再生周波数帯域 20-40000Hz
・インピーダンス 25Ω
・音圧レベル 104dB/mw
・ピンタイプ 0.75mm
・ドライバ 1EST+1DD+1BA(30095)
スペックの数字的にはノーマルZEXとあまり変わっていません。
おそらく、今回のバランスドアーマチュアドライバの追加は、ZEXの音質を微調整するために搭載してきたと思われます。
そして今回追加されたバランスドアーマチュアドライバ(30095)は、低価格帯のイヤホンからフラッグシップモデルまで幅広く採用されているドライバです。印象としては高音域がよく鳴るドライバで、サ行が刺さりやすいイメージを持っているんですが、今回はどのような味付けをしているのか気になります。末尾に“S”の付いていない前のモデルなので、KZのドンシャリの音が好きな人には合うかもしれません。
KZ x Crinacle CRN コラボモデル
今回のZEX PROは、KZとCrinacle氏のコラボモデルらしいです。私はこの方を存じ上げなかったんですが、有名なインフルエンサーさん?レビュアーさん?らしいです。日本でも、凛として時雨のドラマー、ピエール中野さんもAVIOTのイヤホンの監修とかやってますよね。今回もそんな感じでしょうか。
よくよく調べてみると、初期ロットの『ZEX PRO』と、コラボモデルの『KZ x Crinacle CRN ZEX PRO』が存在するらしい。音質は変わらないとされているようですが、海外レビュアーの間では後者の方が音質は良いみたい。現在(2022.1.3)の時点ではAmazonでどちらも販売されているみたいなので要注意。ちなみに私が購入したものは初期ロットの可能性があるので、その点はご承知おきください。
開封
箱の中身
- イヤホン本体
- 取扱説明書
- イヤーピース(スペア)
- ケーブル
イヤホン本体
イヤホンのフェイスプレートは、最近よく採用している亜鉛合金製できれいに造形されています。下側のメッシュは内側からのぞくとメッシュが見えるので、ベント穴として開いているみたいです。多少の音漏れもあるかも。
内側はノーマルZEXと違い、出っ張りのあるタイプとなっています。PROにグレードアップすることでの装着感や密着感を意識してのことでしょうか。あとはイヤホン内のスペース的なこともあるかもしれません。
中を覗くと各ドライバーが見えるんですが、配線がぐちゃっと押し込まれてるのは見た目がよろしくないですね。
まあ、そこは求めすぎだと思うので壊れなければ問題無しとしましょう。
ノズルは、フラッグシップ機にも採用されている金属製のノズルになってました。ゴールドで、PROっぽい感じがしますね。
ただひとつ残念なのが、標準で付いているイヤーピースが“フジツボ型”と呼ばれるものが付いているんですが、これのクオリティーが低い。多分、『お前らどうせイヤーピース交換して使うんだろ?』と言おうとしてるのが伝わります。まあ、実際そうなんで間違ってはいないですけどね。
スペアのイヤーピース
スペアのイヤーピースもフジツボ型のもので、SサイズとLサイズが入っていました。
ケーブル
ノーマルZEXと同じ銀メッキケーブルが入ってました。これは、ほんと絡みにくくて良いケーブルだと思います。
試聴
試聴環境はソニーのウォークマン(NW-A45)を使って試聴していきます。
開封直後の音
ドンシャリ系の音質で、高音域の表現がとても綺麗でした。刺さるか刺さらないかの絶妙なチューニング。
低音は温かみのある低音で、他の音域とバランスが良かったです。
静電ドライバーのおかげか、中音域の奥行きだったり定位感が良く、ボーカルのバックで鳴っている楽器が分離して聴きとれました。
ボーカルの立ち位置は、遠くもなく近くも無くと言う感じ。質感は少し軽めで腰高な印象でした。
各ドライバーのバランスが良く、開封直後から万人受けしそうな音質。エージングしなくても十分完成度が高く仕上がっていました。これでエージングしたらどうなっちゃうんでしょうか。楽しみにしながら少し待ちたいと思います。
100時間エージング
iPhoneのアプリを使ってエージングを100時間行い、もう一度試聴してみました。
音質はドンシャリ傾向で変わりませんが、エージング前より高音域の角が取れて滑らかになった印象でした。中高音域がクリアで見通しが良く、音場も広く感じます。奥行きもあり定位感も良いです。
このイヤホンのチューニングとして、中音域の下の方がカットされている感じで、低音と高音がしっかり分離しています。それが空間のクリアさに繋がっていると思います。
しかし、ボーカルに関しては、ドンシャリのせいか軽めでパンチがないように感じました。逆に言えば楽器の音との馴染みは良いので、この辺は好みの問題かなと思います。
ノーマルZEXと比較
ノーマルZEXは、いかにもドンシャリと言った感じの低音と高音が元気なイヤホンで刺さり気味な高音ですが、PROの方はもっと全体的に落ち着いていて、おしとやかな感じがしました。
低音わ、ノーマルZEXの方が強いです。
インピーダンスについてですが、カタログ値では同じ25Ωなんですが、同じボリュームで聞き比べた時PROの方が音量が小さくなるので、イヤホン内の基板によって調整しているのかな?パワーのあるアンプにも対応していそうです。
ノーマルとPROを聞き比べた結果、PROが完全上位互換と言うわけではなく音の好みで選んでもいいのかなと思いました。
メリハリのあるドンシャリの音が好きで、奥行きのある中高音。更に安いイヤホンを求める人は、ノーマルのZEX。
ドンシャリの音は好きだけど刺さる音は苦手。静電ドライバーとバランスドアーマチュアドライバによる綺麗な中高音で、長時間のリスニングでも疲れないイヤホンを求める人には、ZEX PROがいいんじゃないかと思いました。
バランス接続
今回もバランス接続にして聞いてみました。いつも通り16芯のケーブルにリケーブルして聞いてみた結果、ボーカルの息づかいなど表現力が増し、低音は少し抑えめになりました。悪くはないんですが中高音域で音が渋滞してしまっていて、聴いていて疲れる音になってしまいました。
試しに今回は4芯のバランスケーブルでも聞いてみました。音にメリハリが出て、全体的に、軽かった音に厚みが出ました。同時に、高音も元気になったので、若干刺さりやすい音になりました。
そのほかのケーブルでは試していないので何とも言えませんが、結局純正ケーブルでアンバランス接続が一番まとまっているように感じました。
SONY NW-A45
FiiO Q1 Mark Ⅱ
YYX4849 16芯 銀メッキケーブル バランス2.5mm
YYX4731 4芯 銀メッキケーブル バランス2.5mm
まとめ
・音質はドンシャリ。
・中高音域の奥行き、定位感がよくクリアな音質
・ドンシャリのせいか、ボーカルは乾いた感じで軽め
・エージング前から音のバランスが良く、完成されている
・ノーマルZEXより、落ち着いた音作り。
・3種類のドライバーを搭載したイヤホンの将来性が楽しみ
こんな人にオススメ
このイヤホン、どんな人におすすめできるか考えてみました。
ドンシャリの音質は好きだけど刺さる音は苦手。音場が広くクリアな中高音が好き。という人に合うと思います。
ボーカルのバックで鳴っている楽器がよく聞き取れるので、ギターの耳コピに向いているなと思いました。
現在、1000~2000円の価格帯のイヤホンを使っていて、ステップアップしたいなと思っている人にも合うかなと思いました。もしお金に余裕があれば、更に上の価格帯の、ZAXやZASをお勧めします。